2007年4月22日

良い転職先の見つけ方 -5- ベストを尽くす

ベストを尽くすというのも、最近の企業がよく使うセリフだ。
『お客様のために、毎日最安値』
のような量販店のうたい文句なぞ、どこでもここでも見ることができる。

お客様のためにベストを尽くすと言うと、一見「徹夜をしてがんばりました」的な力技を考えがちだが、実はこれもまったく違う。今まで出てきたものと同様、もっと本質を見なくてはいけない。


すでに何度も出ているが、お客様の真の要望と同じベクトル以外評価対象にしてはいけないという点が、まず最初に重要になる。死に物狂いでお客様が嫌がることをするのでは意味がないし、お客様の要望ベクトルと直交するような作業は価値がない。と言うことは
お客様の真の要望とベクトルを一致させる

あるいはそれに近い方向を向くことで、無駄を省くことができるはずだ。ベクトルが一致すれば一致するほど、無駄な作業がなくなり、労多くして功少なしな状態が避けられる。


力技を使うべきではないというのが次にくるポイントではないかと思う。単純作業は一旦それがルーチンとして明確になれば、より労働単価の安い人や、機械に置き換えることができる。災害時復旧に手を貸すなどといった、一過性のケースは別として多くの力技は機械化できるし、時間単価を考えると機械の方が安い。お客様にすればあなたが徹夜をしたのであろうが、機械がゴンゴン頑張ったのであろうが、違いはない。であれば、機械に頑張っていただき、あなたは十分な休息を取り、凡ミスやヒューマンエラーの類を減らすと同時に次の一手を考えることに集中するほうがよい。

どう過小評価しても、力技を人間が実行する場合に発生するヒューマンエラーはお客様からすれば「ベスト」なものからは程遠いのだから、それだけでも力技は最後の手段だと言える。


お客様が欲しがっている品質を間違えてはいけない、というのが最後のポイントではないかと思う。基本的に品質の向上はコストの増大を伴う。基本的には料金や値段が上がる、という形で反映される。ただ、一部の固定料金システムの場合…たとえばコンサルタントの場合、情報量が多すぎるとそれを読みこなすためのお客様の手間がかかる、と言う形で問題が発現する場合もある(*1)。過ぎたるは及ばざるが如しという言葉があるが、過不足なくというのはお客様満足度を向上させる上で重要なファクターだ。

もちろん、お客様が欲しがっている品質というこのテーマに関しても「自分がどういう品質を必要としているのかわかっているとは限らない」というお客様盲目の法則が適用される。この問題を解決するには、これまた前回同様正しい問いというテーマが発生する。

*1) ここで気をつけたいのは、情報の絶対量が問題ではない、と言うことだ。関連のある情報が多いのは構わない。ただ最初に要旨を準備することが大事だ。Executive Summary と言われるものを1章として用意し、2章以降にお客様にとって直接関連性のある情報を、Appendix として間接的にではあるが関連性のある情報を並べる、という形式をとればよい。

一方で、Executive が読まないのであれば、つまり読者にそのドキュメント全体を読むことを強要せざるを得ない場合は、Summary を最初においてはいけない。特に技術者用の資料は Summary は最後におくべきであって、最初ではない。大半を理解している人は最後から読んでくれるから心配しなくてよい。

問題なのは、全部を読みきり、頭の中で咀嚼した上で自力で結論を考えなくてはいけないというケースだ。全部を読まなくては結論に納得できないというのは問題の複雑さに起因しており、この場合必要な情報を削るのは逆によくないことなのだ。

単純に絶対ページ数を問題視する人がいるが、それは問題を単純化しすぎだ。アインシュタインも言っているように単純化はよい事だが、単純化しすぎるのはよくない。本質を失うからだ。ここでの本質はページ数ではない。要点が最初にあるかどうかだ。

さて、こう考えるとベストを尽くすために必要な要件で、4章までに出てきていないものは…自動化のための努力でありマニュアル化のための努力だ。これは言い換えるとこういう事を当然と思う、という事だ。

特に初回のサービスは人力に頼らざるを得ないだろうが、その際に十二分な時間的、リソース的な余裕を持たせ、作業を逐一記録し、作業後にその内容を精査、分析して、手順の本質をあぶり出し、ドキュメント化する。これを何度か繰り返した後に、自動化を進める。

自動化に当たってはとりあえずは十分な余力を持ったリソースを割り当てて、中途半端な最適化は後回しにする(不足項目があるかもしれない)。また、自動化作業自体は極力自力で行いアウトソースに期待しない(アウトソースすると暗黙知が伝わらないからだ)。自動化の過程でさらに暗黙知が形式知に変化するのでそれを拾い上げることも忘れない。


こういった自動化という目標に必要な工程に対する投資を当然と考える社風があるか、というのが重要なファクターになる。他のファクターはすでに検討が終わっている。

これはある人が新人教育成果発表で使った表現だが:


という事が真の意味で隅々までいきわたっているような会社はお客様のためにベストを尽くす会社だ、と言ってよいだろう。

逆に、これがちゃんとわかっていない会社は、結局あなたに徹夜を強要し、徹夜をして問題を解決した人を賛美して自動システムを使う人を卑下する。それが結果としてお客様に「尽くしていない」事が判らない。このような会社はあなたの労力を浪費することしか知らない。よい就職先とはいえないだろう。