この n 円を稼ぐために、m人の「下っ端従業員」が必要だとする。平社員だけじゃなくアルバイトとかも含めて m人だ。従業員とかを管理する、管理職は m人 の中には含めない。ただし、部長なんだけれど仕事の1割はお客様の所に行くことです、なんて場合もあるだろう。その場合 m人の一部として 0.1 人と考える。ようするに n 円を稼ぐ原動力になっている人たちの頭数だけを数えて m人を算定する。mが大きくなってくると人事とか、総務とかそういう仕事も多くなってくるだろうが、それらの人たち無しでは n 円は稼げなかったのだから、それも mに含める。だけど、「営業マンを束ねる営業部長」とか、そういう人たちの「管理職務分」は含めない。
さて。ここで、n の値が 10倍、100倍、1000倍になったとしよう。mの値はそれぞれどれだけの大きさになるだろうか? ここで市場がそんなにでかくならないとか、そういう話にはならないことにしよう。10000倍にだって簡単になる市場において、粗利を増やすと直接必要な頭数はどう増えるか、という問題だ。
単純に mも 10倍、 100倍、 1000倍になります という組織構造だったら、早晩その会社はつぶれる。
判りやすくするために、今 m = 1 …つまり一人で1億の粗利を稼いでいるとしよう。粗利を合計で10億にしたい。そこでお客様の所に行く営業マンを10倍の10人にしたとする。m=10だ。
一人であれば、営業以外も全て自分ひとりでこなしていただろうが、10人の営業マンがいたら指導や管理をしなくちゃいけなくなる。そのために管理職という仕事が出てくる。ここで仮に10人の営業マンを管理するには一人の管理職…部長としようか…が必要だとしよう。すると、会社にいる頭数の合計は11人になる。
100倍にするとなると100人の営業マンが必要だ。10人の営業マンごとに一人の部長が必要なので、部長が10人必要になる。すると、それらの部長の意思統一を図り管理監督するために部長を管理する管理職…専務としようか…が必要になる。すると、会社にいる頭数の合計は 100+10+1 = 111人になる。
1000倍にするとなると、1000人の営業マンと、100人の部長と、10人の専務が必要になる。10人の専務の意思統一を…もういいだろう?…ようするに一人の社長が必要になる。会社にいる頭数は 1111人だ。
粗利が1000倍の1000億にしかなっていないのに、人手は 1111人必要だ。この粗利の中から1111人分の給料を捻出する必要がある。最初は一人1億のなかから給料を捻出すればよかったのに、今は9千万円から給料を捻出しなくちゃいけない。仮に給料を変えないとすると…売上をどんどこ増やしていくとどこかで赤字になる。赤字にしないためには給料を減らさなくちゃいけない…
あれ~??
売り上げを伸ばして粗利を増やしたのに
給料減っちゃったよ???
会社としての収入の伸びを下っ端の頭数に依存した価格設定にしている会社は、必ずこうなる。
多くの場合、グループ企業の子会社とかは、親会社に対して「何人がかりで何時間働いたのでいくら」というお値段のつけ方しかできなかったりするが、実はこれは子会社が大きくなれないようにするための秘策だったりするのだ。もしあなたが勤めている会社がお客様にそういうチャージの仕方しかしていないなら…転職を考えたほうが良い。規模が大きくなるほど忙しくなるが、儲けはむしろ減っていくのだから。
この状態を回避する方法は全部で4つある。
- 規模を大きくしない
- 定期的に組織構造を根こそぎ書き換える
- mがnに比例している部分をアウトソースしてしまう
- nを増やしても比例してmが増えたりしないようにする
1の「規模を大きくしない」と言うのは「京都で600年間続く老舗」とかではよくある。手広く商売するのではなく、限定された規模のお客様だけを相手にし、その代わりそのお客様を手放さないようにする。これを可能にするためには、収入を他人と分け合わない 必要がある。株式公開なんかもってのほか。借金をしたら利子を取られるのでそれもなし。何らかの希少性を前提にできるならば、この戦略はありだ。
ただ、一般的な企業はそうは行かない。株式は公開されているし、拡大再生産しないと経営陣が突き上げを食らう。
2はようするに「リストラクチャリングを定期的に行う」と言うものだ。ようするにこれは富の再分配の問題なのだから、会社の構造を書き換えて、再分配ルールを変更してしまえばよい。
ただ、これをやると必ず「今までよりも手取りが減る」人が出てくる。そりゃそうだ。そのために構造を変更しているんだもの。大抵この手のしわ寄せは「下っ端」に押し付けられる。問題はほぼ全ての職種で「下っ端」はいくらでも交換可能な存在 ではない という点だ。旧来の高給取りを首にして、安い給料で働く人間を入れると、必ず一人当たりの粗利自体が悪化する。市場で急激に売り上げを伸ばしたので会社の構造を変えたら、品質が悪化、売り上げが縮退し、そのまま倒産…なんて会社があるが、それは リストラに失敗した という事だ。この手段は意外とリスクが大きい。
3はよくある「グループ企業」って奴だ。自分では構造改革できない部分を切り離して外に押しやり、
「自分たちでどうにかしろ」
というかなり無責任な行為。もしあなたが、「人月」でしか値段をつけられないのにこのようにアウトソースされたのなら、すでに万策は尽きている。親会社の方を切り捨てるしかない。他の企業は人月によるチャージにならないよう、値段交渉できるが、親会社は政治的圧力をかけてくるからだ。
で。結局3の場合も独立したあとは 4 の問題を解かなくちゃいけない。10倍の粗利を得るのに10倍未満の人口増でまかなわなくてはいけないのだ。最低限度でも 管理職をも含めた全人数 が粗利の倍率に比例するように、人数が増えると作業効率がよくなるようにしなくてはいけない。
Automation の本領発揮だ
Scalability を確保する方法は、今知られている範囲では、3種類ある。
- 分割
- 機械化
- off demand
…あう。ずんどこ書いていったら終わらないよ。というわけで上記3種類、それぞれの詳細は次回。
ただ、上記3種類、いずれも「無限の scalability」は持っていない。どうしても 一定の n の範囲内で という条件を外すことができない。単に発見されていないだけなのか、存在しえないのかは、不明。