この軸とは「Automationを使って効率が上がるのか?」という評価軸です。
せっかく色々考えて Automation を実施しても、効率が上がらないのでは意味がありませんから。
Automation …特に「補助頭脳型」の場合、次の5つのような効率化が考えられます。
- 実行時間の短縮
計算機化において特に顕著なのがこれです。紙とソロバンで計算するのに比べて、何億倍も速く計算できるコンピューターは実行時間の短縮と言う意味では圧倒的なパワーを持っています。
実行時間が圧倒的に短縮されると、機械を動かすための出費が多少高くてもコスト対効果的には十分…などの補助的な側面も出てきます。 - 人間が関与する時間の短縮 / 省力化
洗濯機が良い例です。洗濯において人間が関与する時間が減り、洗濯のために必要な体力も減りました。また、それに伴い、洗濯ができる人も体力に溢れた人だけではなくなりました。 - 人間が関与するタイミングの集中
自動洗濯機や自動炊飯器、自動皿洗い機などの例は、全て機械が処理をしている間、人間は自由です。つまり、補助頭脳が A という仕事をやっている間、あなたは B という仕事をすることができるわけです(もちろん、休むこともできます。つまりあなたが就寝中に自動的に処理が進むようにすることも出来るわけです)。これは1つ重要なポイントを示しています。
よく、RedHat Enterprise Linux などが 4枚とか5枚とかの CD で供給されますが、これを1枚のDVDにまとめる、という技があります。あるいはインターネット経由でインストールする、という手段も提供されています。これらは、最初にインストール設定を行ったら、インストール作業の最中に
「CD を入れ替える」
という作業のために人間が関与し続けなくてはいけなくなるのを解除するための技です。別の言い方をすると、CD-ROM を DVD-R に焼きかえる、というのも Automation の一種なのです。 - 並列処理を可能にする / 複数人数での処理を可能にする
ちょっとだけすでに言及しましたが、自動化は「なにをするのか全部教えてある」必要があります。つまり「なにをするのか全部教えられるぐらい明確になっている」ワケです。
と言う事は、同じようなことを複数回行う必要がある場合…たとえば、あなたが会計事務所をやっていて、複数のお客様が一斉に税金申告のための書類作成を依頼してきた場合、何をどの順で処理すればいいのかを明確にしてあれば、アシスタントを使って作業を複数人で並行して行うことが出来るようになるわけです。 - 手順を明確にし、それを教えることができる
何を、どの順で、どう処理していけばいいのか教えることが出来ると言う事は、それらをきちんと伝えて、理解してもらった後であれば、その背景にある理屈なども教えるための素地が出来上がっているわけです。
つまり、Automation化のための努力は、全てノウハウを伝授する際にも使えるわけです。これはさらに、Automation化の背景にある概念や応用に関しても気がついてもらうための重要なきっかけにもなります。
特に見落とされがちなのは 5 です。「知の形式知化」と「知の伝達」のためには Automation 化がとても重要なのです。そしてそれ自体が、自分以外の人に作業をしてもらう、あるいは機械に作業を置き換える場合に非常に重要な能力になります。一旦形式知化したら、あとはそれを誰に伝えるのか…は Customer Satisfaction の所で述べた Translate/Transfer 能力の問題になります。
Automation は 1,2,3 の性質から、あなたに「時間」をもたらしてくれます。
あなたが仕事をしなくても、成果が出る、
それが Automation の本質です。
それが Automation の本質です。
Automation だけがあなたに時間をもたらしてくれます。そうして出来た時間を使って、CS で述べた Technology, Transfer/Translate, Focus に関して学習を進めることで、あなたがいままで行ってきた作業の一部をさらに Automation 化することが出来るようになり、さらに時間を得られるようになります。それらの時間を使って、顧客を増やすもよし、別のジャンルにも進出するもよし…。
逆に Automation を意識しないと、手持ちの知識と手作業だけで仕事を繰り返すことになります。時間に余裕はなくなり、常に時間に追い立てられ続ける羽目に陥ります。当然、疲れてきますから、誤りが多くなり手戻りが増え、それらがさらにあなたの時間を圧迫します。睡眠時間を削れば当然それに伴って気づき力、判断力なども劣化。ますます時間が減ってしまいます。
手持ちの知識は徐々に古くなり、周りの人達は Automation 化の恩恵を受ける中、あなたはそれを使いこなすことも出来なくなり…。悪循環が発生します。
私が新人に Automation という概念を教えるのは、それ無しでは学習のための時間が取れなくなるからです。新人の極初期の段階では、研修などを行いますが、これは通り一遍で、現場で必要な知識ではありません。OJT は良い先輩につけばいいのですが、大抵の人は知識に偏りと誤りがあり、それを鵜呑みにするのは危険です。また、OJT で身につく知識の大半は枝葉末節なモノで、10年後にも使えるようなものは極わずかしかありません。
入社後、何年たっても新しいことを吸収できるためには、そのための精神的ゆとりと休息時間が必要です。人間の脳みそはある種のデータ圧縮装置なので、ゆとりがあればあるほど…正確には脳が「ゆとりがあることを知っていれば知っているほど」…本質だけを取り出して記憶する能力があります。しかし、社会人になって以来、「最も暇なのは新人の時」です。それ以降は徐々に忙しくなっていくばかり。そのような状態でも新しいことを学習できるようにするためには、最初の段階で Automation の概念を覚え、自分で出来る範囲から自動化していく事を常に意識し続ける事がどうしても必要になります。