2007年12月30日

「4合を午後6時に炊き上がるようにセットしておいて」には Leadership の全てがあるお話 -1-

「子育てをしている間仕事をしていない。これは女性に不利だ」
という主張をいまだに聞くことがある。はっきり言おう。これは間違った認識だ。

仕事は常にEngineerとしての側面とLeaderとしての側面にわけることが出来る。

Engineer としての側面が要求するのは、専門知識であり、それを日常的に、意識せずとも使いこなすための訓練結果だ。確かにここに関して不利だ、というのは全くその通り。

しかし、Leaderとしての側面は全く異なるものを要求する。仲間からの信頼、この人に任せれば大丈夫という安心感、この人に任せてもらえたと言う形でのモチベーションの向上、この人が言うのだからとグループ全員に同じ方向を向かせる方向性の決定能力、の4つの能力が必要になる。

新入社員は全て、最初の内 Engineer として訓練される。その後に Leader としての訓練が始まる。一方、育児に追われる女性は、実はその中でLeader として訓練されているのだ。確かに、下っ端として復職すれば、Engineerとしての能力で周りと自分を比較してしまう。すると不利に感じるかもしれないが、それは誤った認識だ。あなたの周りにいる Engineer達は皆、これから Leader としての訓練を受けるのだから。

「そんなのは信じられない」

と言うかもしれないが、これは本当だ。その一例として次のような状況を考えよう。
あなたには二人の子供がいる。小学生の低学年と高学年だ(性別は無視しよう)。
意外と手間の掛かる盛りだ。あなたはいつも、夕方に夕食の買出しに出かける。
「4合を午後6時に炊き上がるようにセットしておいて」
というお手伝い要求を子供たちに残して出かけた。
ほら。あなたはすでに Leader だ。二人の子供から見て、あなたは Leader なのだ。そして、たったこれだけのことの中に、Leaderとして重要な要素が5つ隠されている。

1. 子供にでもできるように作業を分割してある
2. 子供を信頼して依頼する
3. 小さな約束をし、守る事で、子供に信頼してもらう
4. 結果に対してフィードバックをかける
5. 子供が依頼を遂行している間、あなたは彼らのそばにいる…も同然

詳細は後で見ていくとして、主婦(主夫でもいいが)というのは Leader としての5つの要素の重要性を日々体験している。逆に新人サラリーマンは5つの要素について考慮する機会が与えられることも、熟慮する余裕もないし、またそれらについて考えたからといって評価されることもない。

よくお父さんのことを「大きな息子」と表現することがある。それは結局家庭内での Leader がお母さん側にあるからだ。お父さんは(通常の場合、平サラリーマンなお父さんは特に) Engineer であって、最初から Leader として訓練されているわけではない。また、ある程度歳をとってからのお父さんは Leader かもしれないが、教育されたタイミングが結構後なので Leader であり続けること 自体、かなりの労力を消費してしまう。会社と家と、両方で Leader であり続けるのはかなり苦痛なのだ。だから、緊急時以外の Leadership を家庭では放棄する(事で船頭が二人になるのを防ごうとする)。その結果が「大きな息子」と揶揄される態度であり、メンタリティなのだ。

注意が1つ。お母さんが日々 Leadership について訓練される立場にある、というのと、それを理解して Leadership について修練を積んでいる、というのとは別の話だ。Engineer 失格のサラリーマンが大量に存在するがごとく、Leadershipについて何も理解していないお母さんも山のように存在する。そのようなお母さんは、「子育てがひと段落した」からと再就職しても、Leadership を必要とする身分にはつけないだろう。逆に
「きっと Leadershipについて学習してきたに違いない」
と会社側が勘違いして Leadership が必要な仕事を割り当てても、そのプロジェクトは崩壊するだけだろう。

結局、「仕事として」まじめに Engineering を学習するのと同じぐらい、まじめに Leadership というものについて学習していなくてはならない、という点は変わらないのだ。

2007年12月24日

英語をどうにかする -10- まとめ

まとめよう。

英語をどうにかするには次のようなことをまず念頭におく必要がある。
  1. 英語で伝える必要があることは何なのか考える。
    英語でなくても伝わることを、英語で伝えようとする必要はない。
  2. 「伝えよう」という熱意がまず何よりも大事だ。ちょっと努力して、すぐ諦めるようではいけない。
  3. 名詞をまずどうにかしよう。特に自分の専門に関する用語・単語は英語で書くようにしよう。カタカナでは最後の瞬間にスペルがわからなくなる。最初からアルファベットを使って書くように。
  4. 類語・類似の表現を日本語レベルで思いつく訓練をしよう。
    「洗剤」に該当する単語を思い出せなくても、「服を洗う石鹸」と表現できれば目的は達成できる。
  5. 日頃から、文章を短くする訓練をしよう。話し言葉のレベルで短く。そして主語や述語を省略しないように訓練しよう。
    長くて、主語が倒置してしまうような文章は、ただでさえ翻訳しにくいものだ。それをリアルタイムで英文に直す事など不可能に近い。普段から不明瞭な文章を話さないようにすることで、「頭の中で英語に直し易い」文章を普段からつむぎだせるようになる。そういう文章を英語に直すのは、比較的楽なはずだ。
  6. 判らない単語に拘泥しない。
    意味が後で推測できるかもしれないのだ。判らない単語はスキップして判るところをつなぎ合わせるようにしよう。
  7. 日本語混じりだって、意味は通じる。英語だけで話そうなどと拘泥する必要はない。
という7項目が今回説明した内容だ。もっと乱暴に言うと、

  • そもそも日本語を話すときに、文章を単純明瞭にする事を心がける。そうすれば英訳する際の負担は軽い。
  • 英語にできる部分から英語にする。つまり日本語の文章で、英単語がいっぱい混じっているのだってかまわない。逆に、判らないからと言って「聞くのを諦めてはならない」。
  • 類似表現をいっぱい思いつくように、普段から訓練する。
の4つにまとめることができる。


日本語を単純明快にする」というのは、やってみれば判るが、意外と難しい。これは「明確な文章を書く」事と同義なのだが、これが至難の業なのだ。実際、「明確な文章を書く」というたった8文字のこの文章自体「明確」ではない。これは正確には:

聞き手にとって明確に意味が把握できる文章を書く

という意味だ。「自分からすれば十分明確である」と言うのは、この場合の「明確な文章」の意図に反する。従って、「単純明快な文」とは単に短い事を意味しない。必要十分な情報が入った上で、短くなくてはいけないのだ。と言うことは、1文1文が内包できる新規の情報は、少量にならざるを得ない。と言うことは、何をどの順番で言うのか、という点にまで気を使う必要がある、と言うことだ。
  • 新しい単語を使う前に、その定義を明らかにする。
  • 文の主体を可能な限り一貫させる。
  • 時間の流れを可能な限り順方向にする。
などの論文の書き方を普段から意識しないと、「最小労力で英語を話す」事はできない、と言うことになる。

最後に、「英語を話す能力は日本語を明確に話す能力に依存する」事に気がつかせてくださった、恩師の 安居院 猛 東工大名誉教授 に、ここに深く感謝いたします。

2007年12月10日

英語をどうにかする -9- これでもいいのだ

これは、某不死鳥技術社において、日本の営業本部長と米国営業本部長の間で実際に交わされた会話を元に、内容を全面的に入れ替えつつも、英語の使い方に関しては一切の嘘をついていない、記録である。

いやー、Johnson さん、
Japan の bad economy のせいで、sales が hard で don't rise ですよ。

Ah, similar here in US too.
Seems like AAA(本当はライバル会社の名前1) and XXX(本当はライバル会社の名前2) seems to be pushing very hard against us. Also EFL technology by Intel is killing us too.

Japan では AAA は not so strong だから OK なんですが、but XXX は bad feeling ですねぇ。be careful が must for XXX ですねぇ。
所で、PC Sales は entire としては how ですか?

PC Sales is divided into PC server sales and personal PC. PC server is growing, for Linux and other technology is focused by IBM, HP and other company, and they are beating up their own low end Workstation markets. However, for personal PC, it' s not growing well. PDA is taking some part of PC user off, while still, new PC user is coming in due to Internet.
そろそろ疲れてきたので、この辺にしよう。

上記、青字が日本人のセリフで、黒字がアメリカ人だ。

青字を見れば判るとおり、日本側は「単語こそ英語」だが「日本語」を喋っている。黒側は純粋な英語だ。でもちゃんと意思が通じている。「本当にこういう風に話し合ってて、意味がちゃんとかみ合っている」所が…一見すごいようで、実はすごくないところだ。

実は今まで出てきた大事なポイントを全部駆使すると、こういうことが出来るようになるのだ。
  • 文章とかの全体の流れはイントネーションと間も使って伝える
  • キーワード、特に専門用語の英語を覚える
  • 文章を短くする
  • 判らない単語はすっ飛ばす、で、後で中間を類推する
この能力があると本当に日本語でアメリカ人と話せるようになるのだ。
じゃぁ、実際、聞いている側はどういう風に聞いているのか、見てみよう。

いやー、 Yeah, Johnson さん -san,
Japan bad economy のせいで、sales hard don't rise ですよ。
Ah, similar here in US too.
Seems like AAA(本当はライバル会社の名前1) and XXX(本当はライバル会社の名前2) seems to be pushing very hard against us. Also EFL technology by Intel is killing us too.
Japan では AAA not so strong だから OK なんですが、but XXX bad feeling ですねぇ。be careful must for XXX ですねぇ。
所で、PC Sales entire としては how ですか?
PC Sales is divided into PC server sales and personal PC. PC server is growing, for Linux and other technology is focused by IBM, HP and other company, and they are beating up their own low end Workstation markets. However, for personal PC, it' s not growing well. PDA is taking some part of PC user off, while still, new PC user is coming in due to Internet.
まぁ、こんな感じだ。お互いに、必要なキーワードだけは絶対にはずさないようにして、あとは単語は「音程の変化」でも同様に意味が取れるように配慮しているのがわかるだろうか?

日本語だと「所で、」のところなどは、その少し前に長い目の空白を入れて、違う話をするんだよ、という配慮などをしていた。英語側だと「However,」なんかは「ところがだねぇ~~」という感じの音程のとり方をしており、これが意味を伝えていた。

最後に、短い文章だと、英語と日本語であまり語順が変わらない、あるいはかかり方が直近の単語で済むので、ほとんど語順が変わらないことも気がついただろうか??文章が短いと、聞いている側が日本語そのものは判らなくても、相手が言わんとしている事の推測をつけやすくなるのだ。

どうだろう? これでも十分意思は通じている。
マジメに英語の文章を話せるようになる前に、このレベルを狙ってみるのはどうだろうか??

2007年12月7日

英語をどうにかする -8- あきらめるなっ!! わんもあせっ!!

"When creating the socket with asynchronous mode, or should I call it non-blokcing mode, it is very obvious to say that you must do many things which kernel was doing when using blocking mode. Communication by itself is asynchronous anyway, and hence, while in blocking mode, it was kernel, and/or libraries that was making this to act as if it is synchronous. However ...."

という英語を話しかけられたとしよう。大抵の人は次のように聞こえるのだそうだ。

"When creating the socket with asynchronous mode, or should I call it non-blokcing mode, it is very obvious to say that you must do many things which kernel was doing when using blocking mode. Communication by itself is asynchronous anyway, and hence, while in blocking mode, it was kernel, and/or libraries that was making this to act as if it is synchronous. However ...."

最初の asynchronous の辺りで力尽き、non-blocking の辺りで脳みそが拒否をはじめ、あとはもうどんどんノイズと化していく…。

当たり前だが、こんなことでは英語はどうにもならない。だってほとんど全て「認識していない」つまり「聞こえていない」のだもの(聴こえてはいるのだろうが…)。

これをどうにかするには、わからない言葉はすっ飛ばす 事を覚えなくてはいけない。つまり:

"When creating the socket with asynchronous mode, or should I call it non-blokcing mode, it is very obvious to say that you must do many things which kernel was doing when using blocking mode. Communication by itself is asynchronous anyway, and hence, while in blocking mode, it was kernel, and/or libraries that was making this to act as if it is synchronous. However ...."

のように聞け、と言うことだ。

さて、もし、あなたがネットワーク通信を行うプログラムを組んだことがあるなら、socketにはブロッキングモードと非ブロッキングモードがあるのは判るだろう。ということは次の赤字のポイントから、緑の部分の意味が推測されることになる。

"When creating the socket with asynchronous mode, or should I call it non-blokcing mode, it is very obvious to say that you must do many things which kernel was doing when using blocking mode. Communication by itself is asynchronous anyway, and hence, while in blocking mode, it was kernel, and/or libraries that was making this to act as if it is synchronous. However ...."

で、緑がわかったら、多分シンクロナスとアシンクロナスが「同期型」と「非同期型」である事が判るようになる。結果として青が埋まる。

"When creating the socket with asynchronous mode, or should I call it non-blokcing mode, it is very obvious to say that you must do many things which kernel was doing when using blocking mode. Communication by itself is asynchronous anyway, and hence, while in blocking mode, it was kernel, and/or libraries that was making this to act as if it is synchronous. However ...."

この辺りまで来ると、kernel とか library とかも意味がわかってくるので、However 以降の英語において kernel とか library というのが「カーネル」と「ライブラリ」だと言うことも類推できるようになる。


もちろん、これらのことをリアルタイムでやるのだからとても大変だ。大変だから、以上のような推理を働かせながらも、態度上は、

「まてまて、ちょっとまったーーー。
 早すぎるよ。もうちょっとゆっくり話してくれ」

という態度で臨まなくてはいけない。そうすれば相手はゆっくり話してくれるようになる。という事は推測するのにかける時間がより多くなる、と言うことで、ますます文章の予測がしやすくなる。


実は、英会話学校でずーっと英語を聞き続けることで鍛えているのはこの 理解できない単語に拘泥しない能力だ。もし、英会話学校でなかなか英語力がつかないと感じているならば、まじめに最初から全部の単語を把握して理解しようとしているからに違いない。

日本語の場合を考えてみると良く判る。日本人のほとんどは判っている単語であってもガンガンかっ飛ばす。特に疲れているとその傾向がひどい。で後で間を補完しようとして…発生するのが「まつがい」って奴だ。日本語でまつがいまくる人が、どうして英語でまつがわないように努力なんぞするのか。もう、その段階でやっていることがまつがっていることが良く判ると言うものだ。

単語が判らなくなるのは、恥でもなければ問題でもない。問題なのは「もう駄目だ」と諦めて全てを投げ出してしまうことだ。休んでもいい。負荷を減らしてもいい。

しかし、諦めるなっ。さぁ、わんもあせっ!!!

Billy は意外といいことを言っていたのだ。

2007年12月5日

英語をどうにかする -7- 短! 短!! 短!!!

『冬が始まるよ』という歌がある。槇原敬之の曲だが、あれの出だしを覚えているだろうか?

著作権の関係があるので全文引用は出来ないが、
八月の君の誕生日
から
一緒に過ごせる為の、おまじない
まで、漢字で書いても全57文字もある。普通、3,5,7 の組み合わせで一文21文字ぐらいしかないはずの歌詞の世界において、だ。

もちろん、それだけ長い一文を書いて、歌詞全体としての整合性を取る槇原敬之の才能は素晴しいが、しかし。

あの歌詞を聴いて、さ、その場で英語に訳せ、と言われたらどうだろう? 辞書を引きまくっても構わないが、何かに書き写すのではなく、全部頭の中だけで訳出して口頭で述べろ、と言われたら…

私には無理だ orz

大抵の英語は苦手、と言う人も同じだと思う。

なのに、そういう人の日本語を聞いていると、やたら長い。
そして実は文章として成り立っていない。
主語が何度も入れ替わったり、
主張点が途中ですり替わったりしている。

その日本語を英語に直そうとしたら…そりゃ、訳せないだろう。

英語の上手な人の日本語は、短い。もちろん、同時通訳レベルになるとそうでもなくなるが、中ぐらいよりちょっと上程度の人だと、英語以前に日本語が短い。

そして主語や述語など、日本語だとぼやかしたり誤魔化したりできるものを、曖昧なままにしない。そして、その日本語はそのまま英語となっても出てくる。短いからおかしな言い回しを必要とせず、順序の入れ替えも少量で済むので、頭を疲れさせない。


と言うわけで、今回のポイントは

ちゃんとした日本語を書けるようになること
短い文章で話すようにする事


これができるようになるだけでも、ずいぶんと英語が楽に出てくるようになるはずだ。