2010年1月8日

新人じゃなくなった人は何を気にするべきか -3.1- 分割

分割は Scalable Organization の基本。
そもそも仕事が分割できないなら、「複数の人間で構成された組織」を作ったり、その一員になったりする意味ないし。

分割には大雑把に2種類ある。
同じ作業を二人がそれぞれやる、というのが「負担の分割」。
一連の作業を2つのパートに分けて、前半のパートをAさん、後半のパートをBさんがやる、というのは「機能の分割」。


「負担の分割」はO(n)のスケーラビリティがある。10人きて、10人同じことをすれば(十分なリソースがあれば)、10倍の速度で仕事は仕上がっていく。ただし、10人に何をすればいいのか教えなくちゃいけない。10人の仕事を評価しなくちゃいけない。マネージャーがいる。だから仕事はO(n)だけど、必要な人数はnの倍数よりも早く増えていく。なので、nが大きな数になると苦しい。しかし、nが小さな数字の間は、管理負荷は仕事の速度向上で相殺されることが多い。それはようするに、仕事がハードすぎて効率が落ちていたって事でもあるのだけれど…


近代といわれる時代以降、ほとんどの分割は「機能の分割」。別名「専門化」。

たとえば、鉄鉱石から自動車を作る仕事を考えてみる。これを全部一人でやるとなったら大変だ。鉄を精製することから始めなくちゃいけない。製鉄が終わったら一部をネジとかにして、別のものは鉄板にして、鉄板はさらに切って削って叩いてカタチ整えて…。その多くのステップそれぞれに必要な道具が異なるし、必要な技能も異なる。さらに作業の結果出てきたゴミを毎回片付けて…

仮に必要な技能は完璧にマスターしているとしよう。必要な道具も全部ある。ゴミ掃除もいらない。
でもそれでもそれらを全て使って自動車を作ろうとしたら、作業手順1つ1つに対して、必要な道具を取り出し、片付ける、という作業が必要になる。

ここで…たとえばネジのカタチをした鉄の塊にネジ溝を掘っていく部分を考えよう。バイトという道具を使ってネジを切る。本来なら、必要なバイトを取り出して、ネジを切って、余計な破片捨てて、バイトを片付ける。
が、仮にあなたはこの「ねじ切り専門師」になったとしよう。あなたの仕事はネジのカタチをした鉄の塊にネジ溝を掘ることだけ。もうバイトを取り出すとか、片付けるとかしなくていい。
仮にネジを切るのが全工程の1%かかっていて、車を1台仕上げるのに20日かかったとしよう。ネジを切るのは本来は 1/5 日。これが一日中ネジを切っていられるとなったら、おそらくあなたは一日に5台分のネジよりもはるかに多くのネジを作れることだろう。また、できたネジの品質は遥かに高いものになっているだろう。

「機能の分割」…つまり「専門化」は、「負担の分割」の場合と違って効率の向上を見せる場合がある。これは、「準備」「片付け」などの生産に直接寄与しない部分を大幅に省略出来る可能性があるからだ。逆に言うと、このような生産に直接寄与しない部分が少なくなってくると、生産効率の向上より、生産物を受け渡しするオーバーヘッドの方が大きくなってくる。

乱暴な話、チャーハンを作る作業を次のように、全部別の人に割り当てたとして効率があがるとおもうかい?
  • 中華鍋を加熱する
  • 中華鍋に油を馴染ませる
  • 中華鍋に油をしく
  • 溶き卵を投入する
  • 具材を投入する
  • ご飯を投入する
  • 最初の一振り
  • 次の一振り
絶対無理だわな。ということは、機能の分割もやはり n の大きさに縛りを持った方法に過ぎない、と言うことだ。

でも、nの大きさの範囲内であれば、10人に同じ作業をやってもらうより、作業内容を10個に分割してそれぞれに専門の仕事をやってもらった方が、作業の進み具合は速い。10倍の人数で12~15倍ぐらいにはなる。ほら、マネージャを養う余裕ができた。

「機能の分割」の辛い所は、一連の作業を一旦全て明文化しなくてはいけない事。何をやっているのか理解していないと、分割できない。
「とりあえず先輩の仕事ぶりを見て、それを盗んで」
などという、 自分でも何やってるか判りません 的な、あまっちょろい状態は許されない。

くっきり、すっきり、はっきりと、何をするべきかわかってくると、この先に進める。そう。機械化だ。